- 墓地の場所が遠かったり、墓石までの階段を上がるのが大変なので移動させたいとお考えの方
- お墓を改葬するのにどの程度の費用がかかるのかを把握しておきたい方
- お墓の改葬にはどのような方法があるのかを知りたい方
近年、「引き継いだお墓が遠くて維持・管理が難しい」と悩まれている方が増えてきています。2016年に株式会社オレンジページ様から発表されたアンケート結果によりますと、「お墓について考えていること、悩み、心配なことなどはありますか?」という問いに対して全体の21.6%(約5人に1人)が「遠方のため、頻繁にお参りに行くことができない」と回答しております。
というのも、進学、就職、結婚などがきっかけで地元から離れてしまっているという方が多くなっているためです。お墓の場所が遠いことで、
- 「せっかくの長期休暇なのに、帰省ラッシュの中ヘトヘトになりながらお参りにいかなければならない」
- 「お墓参りをするのに片道で何時間もかけなければならず、交通費も膨大にかかる」
といった事例も少なくありません。
そこで注目をされているのが「お墓を自宅近くの墓地へ移動させる(改葬)」というものです。政府の調査によると、全国の改葬件数について2014年度では約8万件なのに対して2019年度には約12万件と、たった5年間で1.5倍にまで増加しています。
ただお墓関係の手続きをしようと思うと、それなりに費用かかりそうだとぼんやり不安に感じている方もいるかと思います。
はじめに結論を言うと、お墓の移動方法には、
- 遺骨とお墓をまとめて移動させる
- 移動元のお墓をなくして遺骨を取り出し、移動先でお墓を建てる
- 移動元のお墓は残しつつ、遺骨の一部だけを取り出し、移動先でお墓を建てる
そこでこの記事ではお墓の移動に関するおおよその費用感についてパターン別にご説明をしていきたいと思います。
ある程度の作業がパック料金化されている石材店もございますが、見積入手後に内容の過不足がないかを確認する際などにも、ぜひご活用していただければと思います。
目次
共通
ここでは、パターンによらず共通してかかる費用についてご説明いたします。
遺骨の取り出し
お墓から遺骨を取り出すには費用が必要です。というのも遺骨が保管されている納骨室(カロート)の蓋は非常に重たいため、石材店などに問い合わせて作業をして貰う必要があるのです。重いものだと100kg近くにまで及んだりもします。
費用はおおよそ数万円程度が相場だと言われております。
閉眼供養(魂抜き)
移動元のお墓からご先祖様の魂を抜くための儀式をするのに必要となる費用となります。閉眼供養はお布施として支払うものです。そのため決まった金額を言われることはなく、支払い可能な範囲で住職の方へお気持ちとして包むということになります(結婚式のご祝儀のようなものです)。
一般的に言われている相場は数万円程度ですが、詳しくは移動元の墓地の住職などにご相談してみてください。
永代使用料・年間管理費
移動先の墓地の使用料(永代使用料)と管理費となります。永代使用料については「公営墓地か民営墓地か」「墓地の場所はどこか」「檀家になるかどうか」などによって費用は大きく異なります。
ちなみに年間管理料というと「墓地を管理する方がお墓の掃除もしてくれるための費用」と思われがちですが、個人のお墓の維持や、管理、清掃は行われません。基本的には個人のお墓の区画内は使用者が管理・維持をしていく必要があります。
詳細につきましてはお客さまが候補として挙げられている墓地にてお問い合わせいただければと思います。
据付工事費
移動先の墓地にお墓を建てるために必要な工事の費用となります。墓石を設置するためには単に墓地に置くだけではなく、地震等による倒壊を防げるようしっかり基礎工事をしていく必要となってきます。
また、お墓が完成したら納骨もしていきます。
開眼供養(魂入れ)
移動先のお墓へご先祖様の霊を入れるための儀式をするのに必要となる費用です。閉眼供養とは逆の作業となります。
こちらの費用についてもお布施扱いです。一般的には相場は数万円程度と言われていますが、詳しくは移動先の墓地の住職などにご相談してみてください。
パターン1:遺骨とお墓の両方を移動させる
遺骨とお墓の両方を移動するパターンですが、こちらの最大のメリットは、先祖代々使用されてきた墓石を移動先でも使用できることにあります。
長く使用されてきた墓石ほどご家族にとっての歴史的価値が増してきますが、その墓石を移動先でも使用することでその価値を崩さずに使い続けることができるのです。
ただし、移動先の墓地が墓石の設置スペース的に問題ないかどうかは、必ず事前にご確認ください。
このパターンにおいて発生する主な費用は次のとおりです。
お墓の撤去費用
墓石の解体と、区画の整備をするのに必要な費用となります。墓石を移動先の墓地へするにはある程度解体をする必要がありますので、重機等を使いながら丁寧に作業をしていきます。これに加えて移動元の墓地を返還するため、区画を更地にする必要があります。お墓は一般的に耐震のための基礎工事がされているので、そこももとの墓地の状態に戻していきます。
費用はお墓の区画の広さやお墓の状態にもよりますが、1m²あたり数万円~15万円と言われております。
墓石運搬費
移動元の墓石を移動先へ運搬するのにかかる費用となります。墓石は非常に重たいものですから、運搬をするには重機やトラックが必要となります。
また、墓石自体が古くて老朽化している場合、運搬中の振動などで亀裂が入る懸念を考慮して補強を行う場合もございます。
費用については、お墓の大きさや移動先までの運搬距離などによって数十万単位のばらつきがございます。
弊社でもご相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
パターン2:移動元-墓じまい、移動先-新規建立
こちらの方法は、もともとあったお墓からご遺骨を取り出して、お墓自体は墓じまいをした後に、移動先で新しくお墓を建てるといった方法になります。
お墓の撤去費用
パターン1の墓石の解体と墓地区画の整備に加え、墓石の処分料も追加でかかってきます。これらを含めたお墓の撤去費用は1m²あたり10~20万円程度だと言われております。
遺骨の移動費
遺骨を移動先のお墓に移動させる上で、遺骨の配送を依頼する場合にかかる費用です。おおよそ1000円ほどで移動することができます。ただし、配送をする上では、骨壷の蓋が外れないようしっかり固定したり、配送中に骨壷が破損しないよう緩衝材などで梱包するなどはご自身で行う必要があります。
なお、遺骨の配送は日本郵便の「ゆうパック」でのみ、遺骨を配送することができます。他の配達業者ですと約款の中で「配送不可」と明記されているので注意してください。
墓石購入費
新しくお墓を建てるための墓石の費用です。墓石の費用については、そのデザインや、戒名、オプションの内容によって費用は大きく変わってきます。せっかくお墓を建てるのであれば、お墓のデザインを一新されるのも非常によい選択かと思います。
「具体的に、お墓にはどのようなデザインの種類があるのか?」などについては別の記事で詳しくご説明しておりますので、気になる方はチェックをしてみてください。
パターン3:移動元-お墓を残す、移動先-新規建立
こちらは、移動元のお墓からご遺骨の一部を取り出したのち、新しく建てたお墓へご遺骨を移すといった方法になります。
遺骨の移動費
パターン2でご説明したものと同様、日本郵便の「ゆうパック」で遺骨を移動先のお墓に送る場合にかかってくる費用です。
墓石購入費
パターン2でご説明したものと同様、お墓のデザイン等によって費用が大きく変わってきます。詳細が気になる方は以下のリンクをご参照ください。
その他の費用
離檀料
これは、もともとのお墓がお寺に管理してもらっていてその檀家になっているという方が対象となります。お墓を移動する上でお寺の檀家をやめるという場合に、離檀料という費用が必要になります。
離檀料はお布施として支払うものです。そのため決まった金額を言われることはなく、支払い可能な範囲でお気持ちとして包むということになります。
お墓の大きさや地域性、付き合いの長さなどによって費用は異なるようですが、よく言われる相場は数万円程度です。
金額に悩んだら、周りの檀家さんやご住職に相談してみるのが良いかと思います。
事務手数料
お墓を移動するには書類による手続きが複数必要となります。その書類作成には役所はもちろん、住職の方にも書類を作成、記載をして貰う必要があります。
場所によって無料・有料が分かれているようですが、費用は高くても遺骨1つにつき数千円程度だと言われています。
どれが最も費用を抑えられるかはケースバイケース
最も気になるのが「どれが最も費用を抑えられるか」だと思いますが、これは結論を言うとケースバイケースとなります。というのも
- 墓地ごとの規則・料金
- お墓の状態
- お墓の大きさ
- 移動先までの距離
- 法要費 など
によって費用が大きくばらつきがあるためです。確かにお墓の移動だけを考えれば、パターン3の「移動元のお墓は残しつつ、遺骨の一部だけを取り出し、移動先でお墓を建てる」が最も費用を抑えられる傾向がありますが、その一方で管理するお墓が複数あることによる管理費の増大やお参りの際の交通費などトータルの費用で考えると高くなってしまう可能性もあります。
お墓の移動費用について調べていると「平均で〇〇万円」と記載されているメディア記事や書籍がございます。ですが、お客さまの場合も平均通りの金額になるかの査定は、やはりお客さまのご状況を確認させて頂く必要がございます。もちろん場合によっては平均よりも費用を低く抑えられるパターンもございます。
弊社では、そういった費用のシミュレーションや見積作成なども承っておりますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。